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最強の短歌

土曜日、PTAで学校に行ったら、フェンスに息子の作った交通標語がくくりつけられていた。書道部が布に書いたのが、それなりにかっこよく見える。「左右の確認 命を左右」

今年のPTAの仕事はこれでおわり。楽しかったよねと、係りの4人で話したけど。2人は高校受験のお姉ちゃんがいるのだが、私立も決まって一安心みたいでよかった。いろいろあったのだ。それから、公立高校の受験者数の話とか、中学受験高校受験の、あれこれの塾の話とか、聞いた。

え、塾ってそんなにお金かかるの、といまさら震えた私だ。

それを考えると、とても経済的な息子だった。

標語、といえば、すこし前に、教室の後ろに担任が貼った、どこかのお寺の教えらしいけど、そこに「不幸になる道」として、「他人の陰口悪口を言う」とあって、息子、それを見て、罵倒観音のことは、心が晴れたらしかった。

その教えを見たか見ないか知らないが、罵倒観音は、息子のことをずいぶん悪く言ったのを、言い過ぎたかな、と言っていたそうである。だって、あんまりミッキーがしつこいから、強く否定しないと、噂されたら困るし。もうすごく気まずくて、ミッキーが悪いのよ、って。

というわけで、面白がっているうちに、一番悪いのは自分だということになってしまって、あわてたミッキーは、またあらためて息子に謝罪を入れてきたそうである。許してくれ。お願いだから、もうこの問題には触れないでくれ。

どれくらいみんなが、息子の失恋話を面白がったかというと、クラスでこの話を知らないのは、洪水ちゃんだけだろう、というほど。

でもまあ、次から次へといろいろあるもんだ。

ある日。休み時間に、ワークブックやっていたら、女子のNが、通りすがりに「きもっ」と息子に言い捨てていった。唖然として、声もでなかったが、「きもっ」は心臓に刺さった。

また別の日。Fがまた。

掃除のとき、息子の足もとにゴミが落ちているよと誰かが言った。するとそこにいたFが「こいつゴミだから」と息子のことを言った。

けっこうしつこく、「おまえはゴミ」と言った。

おまえもな、と私の息子は言い返したりはしないのだった。

数学の単元テストが返されて、息子の答案を取り上げてのぞいたFは、それが100点とわかると、「このクソチビ、しね」と言ったらしい。これをまた文字通り受け止める息子……。

Fは、春ごろ何度か息子を殴ったりしていたが、また最近、殴ってくるらしい。

御乱心だ。成績も急降下中らしいんだけど。

あのさ、こういう短歌があるんだけど。どうかな。前にママがつくったんだけど。

「悪口の言葉は言われるほうよりも言うほうに主にあてはまるよね」

指を折りながら、字余りだ、とか言いながら、暗唱した息子、

「ああ、なんかすっきりした。すごいよ。ママの短歌、最強だよ」。

こんな歌、ほめてもらってもなあ、という感じだけど。気持ちは晴れたかい。

女子の悪口は気にしない。無視。

Fは、これで3度目、殴ってきた、鍵を盗んだ、悪口を言った。ゴミ扱いされて、友だちだと思わなくていいからな。ゴミとか臭いとか言われたら、じゃあ、あっちへ行けって言えばいい。絶交してもいいし、先生に言ってもいいし、自由にしていいよ。

思うに、Fが息子に近づいてきたのは、自分よりも背が低くて自分と同じように不器用なのを見つけたからだと思う。そこそこ仲良くやっていたが。

小学校のときからそうだが、息子のまわり、他に行き場のないのが澱んでくるなあ。

すこし洪水ちゃんを見習うといいよ。

洪水菌がどうこう言われても、人の言うこと聞いてないし、天上天下唯我独尊でしょう。

きみもその素質はあるのに。

「だからぼくは、そうならないようにしようと、学校で猫かぶってて、もうくたくた」

それで勉強が手につかないと言いたいのか。試験前なのに、家に戻るとだらだらなのだった。でも、猫かぶれてないだろ。