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象と盲人に思える話

遠浅の海辺でちゃぷちゃぷ遊んでいると、ときにそのような光景を目にする

白砂とは言い難いが、かといって黒い砂ではなく、全体的には白い砂浜が広がる

遠くに数羽いる

かもめ【鴎】

かもめ科の中形の海鳥。

だろう

とんび【鳶】

とび。和服用の男性の防寒着。

とび【鳶】

わしたか科の中形の鳥。「とびの者」の略。

のようにくるりと輪を描かないが鳥に違いない

うみねこ【海猫】

かもめ科の海鳥。鳴き声がねこに似ている。日本近海の特産。

かどうかもよく知らない

かも【鴨】

だまして、利用しやすい相手。がんかも科に属する水鳥。

と似てるがヤーチャイカ

違うと言うなら

そうなのだろう

わし【鷲】

わしたか科の鳥のうち、大形の猛鳥の総称。

つばめ【燕】

つばめ科の小鳥。

すずめ【雀】

すずめ科の小鳥。よく出入りして、そこの事情に詳しい人。

さぎ【鷺】

さぎ科の鳥の総称。

うぐいす【鶯】

うぐいす科の小鳥。うぐいす色。

こまどり【駒鳥】

つぐみ科の鳥。うぐいすぐらいの大きさで、美しい。深山にすむ夏鳥

ロビンはどこでも泣き暮らす

「私が殺した」とクック・ロビン

「私も殺した」とロビン・フッド

遠くに見えている灯台には、昔から偏屈な老人が住んでいて、いつの間にか暮れては灯りが点(とも)る

朝が来ても灯りは点っていたりした

回っていた不自然なリズム

慣れっこなので誰も気にしない

沖を通る船も承知していた

そこは滅多なことでは船も入ってこない

遠浅の浜に連なる小さな入り江である

船を持つ者のうち、半数以上は漁師ではない

浜にある村らしきものは漁村ではない

何で生計を立てているのか

おそらく初めて来た旅人には全くわからないだろう

滅多にひともこないのだ

他と違う、というだけで、観光資源として大騒ぎする役所や団体も昔はあったのだ

いつしか廃れて

再興しないのだ

まったく観光に向いていないのだから仕方ない

平凡な砂浜だ

わざわざ遊びにこなくても

他にもっと楽しいエリアがある

漂着するには難儀する土地柄だ

海からは来にくい地形なのだ

山側もなだらかだが、びっくりするしかないくらい道がない

崖で隔てられた陸の孤島でも何でもない

単に往来がなさすぎて、道がなくなっただけなのだ

下手すれば地図にも載らないくらいの寒村である

何のためにも存在していない

そう形容すれば

少しはましだ

風変わりな住民はとにかく数が少ない

全く外部と繋がりを持たない者が多い

村の内部でも繋がりがないことがほとんどである

一人一人がインディペンデント

全くデベロップメントしないのも面白い

終わっていることをよしとしている

干渉しあわない海岸線

死んでいるわけでもないのに全く生きているようでもない

その土地をシステムとして理解しようとすれば

木乃伊(ミイラ)になるまでそこに根を下ろすしかないが、それは完全に無駄である

死を悟った象が

墓場へ行く

その前に立ち寄って

体を洗う泉がある

そこは海水の近くにあって

完全に真水なのだ

見晴らしもいい

動物も植物も少ない

最寄りに盲人が住んでいる

撫でているように見えるのだった

彼もしくは彼女は

静かに象を洗った

その場面だけを切り取るので

彼もしくは彼女は

盲人だとされている

理解を拒む浜にあって

泉の象を撫でている人間にされてしまう

遠くから見た住民が至極簡単にそのよに判断したのが始まりだった

誰も反対しなかった

誰にも言わなかった

他のひとも同じように感じただけのことだ

象と盲人はセットアップされた

象も盲人もそれを知らない

知ったところで

否定もしないだろう

曰く「私は象ではない」「私は盲人ではない」――とは言わないだろう

あらゆることを受け入れた

もしくは最後にもう一つ受け入れようとする存在が

たまたまその泉を利用するのだった

達観した彼らの成り立ちは

余人の知ったことではなかった

あまりにも長い時間に退屈するとき

遠くに蜃気楼が発生する装置を動かした

夜空に果てがあるかどうかは

誰も気にしなかった

光苔のように

蜃気楼は

闇に蠢いた

不自然な灯台

嬉々として

光った

そこでようやく

灯台鬼は

思い出すのだった

これは私の子

詩だ

何をしたかを

連ねた古い詩を

よんでいた

知らず発音した

そのときにしか叶わない

路(みち)が通った

翌朝

偏屈な灯台守りは

不思議なものを見つけた

何も気にしなかったが

不思議だった

瓶があった

手紙が入っていた

まど・みちお」と読める

104歳だったかで亡くなられた現代詩人のペンネーム

知らなくて

よかった

昔に何があったのか

私は知らなくてよかった

だから遠浅を選んで

ちゃぷちゃぷ

遊んで

知らないことを

あまねく尊ぶ